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もしも今あなたが会社員だったとしても、きっとゼロから仕事は生み出せる #Solo会

こんにちは。ライターの鈴木しのです。

突然出てきて「こんにちは」だなんて、どこのどいつだと言われてしまいそうなので、少しだけわたしの自己紹介をさせてください。

わたしは、昨年の11月からフリーランスのライターとして活動しています。

当時通っていた専門学校を中退しての、フリーランスという選択。いまは文章だけでごはんを食べていますが、つい数年前のわたしにはそんな働き方は異次元であり非現実的な世界でしかありませんでした。

「フリーランスで、ライターで、」と誰かに向けて自己紹介をするたび、本当に自分がフリーランスなのだと改めて感じてなんともいえない不思議な気持ちを味わっています。


きっと、わたしと同様に「働き方」や「生き方」について考えている方や悩んでいる方って、どこかにいるような気がします。

世の中にたくさんあふれている多様な働き方のうちで、「旅」を生活の軸に選んだ方も、います。

今回は、そんな「旅するフリーランス」の方々が登壇されるイベントに足を運んできました。

東京・半蔵門の「LIFUL HUB」で開催された『旅するフリーランスが「ここだけの本音」を語る会』です。

イベントの概要はこちら。

「日常的に旅をしているフリーランス」の先輩方をゲストに迎え、「旅しながら働く」スタイルのメリットだけではなく、デメリットや苦労話などをとことん追求し、本音を語っていただきます!(イベント公式サイトより)

登壇されたのは、ライター・フォトグラファーの古性のち(@nocci_84)さん、フリーランスの働き方をアップデートするメディア「SoloPro」編集長を務める松田然(@moyulog)さん。そして、ファシリテーターを務める、ライターの坂口ナオ(@skgc_n)さんです。

(今回開催された「#Solo会」は、松田然さんが月に一度開催している、個人で働く人々をつなぐリアルイベントです)

「旅」を軸に見つけた、フリーランスの姿

坂口ナオ(以下、ナオ):みなさん、今日はよろしくお願いします。まずは簡単に、それぞれ自己紹介をお願いします。

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古性のち(以下、のち):古性のちです。もともと美容師からのキャリアのスタートだったのですが、現在は職種が変わってライター・フォトグラファー・バイヤーとして働いています。

美容師として働いたあとは、一度Webデザイナーとして制作会社の「LIG」に勤めていましたが、2016年に独立して7ヶ月間、17ヶ国26都市を巡る世界一周の旅に出かけました。現在では、だいたい月の半分を日本、もう半分を海外で過ごす生活をしています。

ナオ:フリーランスとして働くようになったのはどうしてですか?

のち:「世界一周をしながら仕事がしたい」「旅をしやすい働き方でありたい」と思ったときに、一番合っていると感じた働き方がフリーランスだったからです。

ナオ:なるほど、ありがとうございます。次に、松田さんお願いします。

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松田然(以下、然):松田然(もゆる)です。もともと、10年間ほどライターとして働いていたのですが、現在は起業して会社を立ち上げて代表を務めています。旅に出たのは、東日本大震災を経験したのが大きな理由です。

震災のなか、多くの方が被災地にボランティアとして出向いていたのに、僕は起業したばかりで休む暇もなく働いていて……。その場所に行きたいと思ったときに、仕事があるから行けないという自分の働き方を変えたいと思っていました。

その後、起業しながら週5で会社員としても働いていたのですが、その会社の社長に「自転車で旅をしながら働きたい」という、今考えると無茶苦茶な交渉をしたんです。

実際に1ヶ月間、東京から北海道の宗谷岬(そうやみさき)まで自転車旅をしながら、途中の東北では震災エリアを訪れてレポートを書いたり、東京のクライアントの仕事を旅先でこなしていました。

そんな実験を通じて、旅をしながらでもしっかりとお金を稼ぐことができるという自信がついたので、完全に独立をして会社を経営しながら働き始めたのです。

ナオ:ありがとうございます。

:のちさん、気になったのですがなんで世界一周をしようと思ったんですか?

のち:高橋歩さんの『LOVE&FREE』を読んで旅する生活に憧れたからです。16歳のときに高橋さんのように旅をして生きる人間になろうと決めたのですが、最近、ついに高橋歩さんと一緒に登壇する機会をいただいて……夢だったのでとても嬉しかったです。

:僕も高橋歩さんの本は、大学生のときに読みまくっていました。当時はアルバイトでお金を貯めては旅に出て、またお金を貯めては旅に出て……と繰り返している学生だったのも、高橋歩さんの影響がありましたね。

自転車で東京を出発して鹿児島まで、3週間で3万円くらいの低予算で旅をしたのですが、それも貧乏なりにワイルドな旅のスタイルに憧れていたから行なったことです。

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ナオ:おふたりの話を聞いていると、フリーランスになりたかったわけではなく、自分の生き方を考えた結果フリーランスが合っていた、というほうが近いんですね。

旅しながら生きる上で、“ツラい”を感じたときに乗り越える方法

「旅をしながら働く」と聞くと、一見夢のような生活にも聞こえてしまいがちですが、なかにはさまざまな問題点を抱える方もいるといいます。

その例として挙げられたのが、こちら。

  • インプットが多すぎて消化しきれない問題
  • 旅にはお金がかかってしまう問題
  • 体力をものすごく使ってしまう問題
  • 荷物が重すぎる問題
  • 旅先でのノマド、捗るのか問題

実際のところ、旅先での生活を経験したおふたりはこれらの苦労とどのように向き合ってきたのでしょうか。

ひとつずつ、回答していただきました。

「インプットが多すぎて、消化しきれません」

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のち:インプットが多いの、すごくわかります。旅先、とくにわたしの場合は国外が多いですが、歩いてるだけで楽しいんです。わけわからないレストランもあるし、ドアを開けっぱなしで走ってるバスもいたりする。どんどん発信したいと思うと、消化しきれなくなっちゃいますよね。

そんなとき、わたしはなんのために発信をしているのか考えるようにしています。わたしの場合はTwitterでの発信がメインですが、自分の活動を見守ってくれている方にもリアルタイムで旅の様子を共有したいと思ってアウトプットしています。

そのなかでも、日頃の発信は「かわいい」「ときめく」とテーマを決めて、女の子が好きそうなものに発信の軸を絞っているんです。どんなに「すごい!」「伝えたい!」と感じるものがあっても、その軸からずれたことは発信しない。だから消化に困ったことはありません。

:Twitterでの発信って、趣味なんですか? それとも、お仕事なんでしょうか?

のち:SNSはビジネスだと思って使っています。ひとつひとつのツイートは自分のブランディングをつくってくれるものなので、仕事の意識を持って発信するようにしています。

ナオ:ライターならではの視点ですね。もしも同じ立場でジムのインストラクターさんが発信するとしたら、現地のジム情報を集めるほうがいいと思うし。職業によって発信テーマは変わってくるのかもしれないですね。

:「旅ライター」を名乗るときって、初心者ほどインプット過多になるんですよね。自分の発信テーマや、クライアントが求めているテーマを理解しないままにインプットしてしまうから。

僕は、旅をするときにはインプット過多にならないように、心と時間に余白をつくるように意識しています。「あそこも、ここも行かないと」だと、インプットも増えてしまうし時間にも追われてしまいますから。ゆるっとしたスケジュールを組むことで、インプットの量を調節しています。

のち:たしかに。どうでもいいけれど誰かに伝えたい情報は、仲のいい友達に送るようにしています(笑)

ナオ:なるほど。テーマを決めることで、一度なにを発信するべきなのかという“フィルター”にかけているんですね。

:ライターの職業に限ればクライアントがいるので、仕事のテーマを決めることは重要です。それ以外の職業でも、発信のテーマを決めておくほうが、結果的にアウトプットの質は上がると思います。

「旅しながらの仕事って、お金がかかりすぎませんか?」

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ナオ:これはすごく気になる問題ですね。とりあえず現地に行ってから仕事を取るタイプと、仕事で旅先に行くタイプとでもお金の使い方は変わりそうです。

のち:全然違う気がします。わたしは、お金をかけるところと削るところをしっかりと分けています。自分はなににお金をかけたらしあわせなのかという「幸福度」の違いで、使う・使わないを決めていますね。

:僕の旅のスタイルは基本が自転車移動なので、交通費はあまりかかりません。宿もWi-Fiさえあれば安くて構わないです。出発するときには自費でまかなっていても、アウトプットをしっかりすれば新しいクライアントが見つかるので、特別お金に困るってことはなくなりました。

むしろ、地方に足を運ぶと旅人ならではの目線で、その地域が抱えている課題を見つけることもできるので仕事につながることもあります。

ナオ:移動費は自費なんですね。たしかに、いろいろな地域に行くと、意外な場所にキーマンがいて仕事につながるってこともありそう。

:旅でさまざまな地域を訪れると、「あそこにコワーキングスペースがあるよ」「ここでイベントが開催されるよ」と教えてもらえる機会が増えて新しいコミュニティーに出会えるので、なにかとお得に旅できる……なんてこともありますね。

「体力って、あったほうがいいですか?」

のち:わたし、本当に体力がなくてめっちゃ病弱なんですよ。旅先ってすごくテンション上がるからついつい外に出たくなってしまうのですが、2日外出したら1日は宿にこもるという充電方式を採用して上手に乗り切っています。なるべく長距離は歩かない、無理しないとかも、意識していますね。

それに、旅だけする場合なら使う体力の予想もできるのですが、加えて仕事が入ると体力も精神力も削られてしまう。だから、常に6〜7割のスケジュールの余白を残して、自分自身の生活にバッファをつくって仕事をこなしています。

ナオ:ということは、現地での取材で動き回る……よりも、宿でもできるような仕事もあったほうがいいのでしょうか?

のち:そうですね。わたしの場合は1ヶ国につき2週間くらいの滞在期間を設けて腰を据えて仕事する時間をつくっています。滞在費用はすごくかかりますが、精神的につらくなってしまうのを防ぐためには必要なことだと思っています。2年前に世界一周していたときには滞在費用を抑えて安いホテルにも宿泊していましたが、とてもつらかったです……。

:僕は、普段からトレーニングをしていて体を鍛えていたので、体力的に問題を感じたことはありません(笑)

「荷物、重たくなってしまいませんか?」

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:荷物の量は、旅にテーマがあるかどうかで変わります。テーマがないと、「不安だからとりあえず全部持っていこう」となってしまいやすいんです。海外でも国内でも、困ったときには買い揃えられるのになんでも持っていこうと考えてしまうと荷物は必然的に増えていきますね。

のち:わたしはとても荷物が多いほうだと思います。現地でかわいい格好をしたいと思って、たくさん洋服を持って行ってしまうんです。ただ、滞在期間が長い分、宿に荷物を置いて出かけるので、荷物が増えても困るほどではありませんね。

「海外ノマドって、仕事は捗るのですか?」

のち:めっちゃ捗ります。というのも、わたしは旅をするときにポケットWi-Fiを持ち歩かないんです。必ずWi-Fiのあるカフェで仕事をするので、せいぜい滞在できても3時間程度。限られた時間のなかで仕事を終わらせないといけないので、すんごく捗ります。

:自分の仕事をあらかじめ分解して、「なに」を「いつ」やるのか決めると捗ります。たとえば、移動中の座っている時間はインターネットにつないで調べものをするとか、歩いてる間には取材の企画をつくろうとかって具合ですね。

ライターだからといって文章をずっと書いていればいいわけではないので、ひとつの仕事を分解することで、スムーズに仕事を進められるようになります。

日本よりも数倍便利な、海外のコワーキング事情

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:海外って、日本よりもコワーキングスペースやWi-Fiの完備されたカフェがいっぱいありますよね。以前、のちさんに「タイのチェンマイが最高!」と教えてもらって行ってみたのですが、すごくよかったです。

のち:カフェとコワーキングスペースの量ははんぱじゃないですね。たとえば渋谷と比べても、チェンマイのほうが圧倒的にカフェの量が豊富です。コワーキングスペースも初回無料だったりするし、ごはんは安くておいしくてボリューミー。

:滞在費も、コンドミニアムを借りて5万円/月くらい、ゲストハウスの個室でも1,000円/1日、地元のランチなら100円くらいで……ってできますよね。しかも、渡航費も安い。今月バンコクに行くのですが片道1万5,000円くらいです。

ナオ:安い……! 反対に、おすすめしない国や地域はありますか?

のち:インドですね。1日に3回くらいは停電するし、Wi-Fiがあるって書いてあるカフェに入ったのにじつはWi-Fiが通っていないとかもあります(笑)IT大国だから、街によってはすごく綺麗なコワーキングスペースもあるのですが、すこし田舎のほうに離れてしまうとボロボロです。

「旅できる職種は?」気になる会場からの質問箱

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ここで、会場から事前に集めていた質問に回答していきます。

「旅」をライフスタイルにする上での疑問や不安を率直に書いた質問の数々に、登壇者の方々はどのような答えを生み出すのでしょうか。

Q.ライター以外で、仕事に繋がりそうなフリーランスの職種はありますか?

:たくさんありますが、みんなが就きやすい職種は競合が多くなりますよね。ライターやフォトグラファーはそういった意味ではレッドオーシャンです。

その反面、美容師のように、本来は店に来てもらうスタイルだった職種が、自分が世界に飛び出ていくことで旅する美容師になったケースもあります。従来の常識とは異なった新しい働き方を考えれば、いろいろな職種で応用可能だと思います。

ナオ:旅先で出会った職種では、なにが多かったんですか?

のち:薬剤師と看護師が本当に多かったです。そのほかは、ライター・カメラマンかな。ただ、わたしはどんな職種も旅しながら仕事ができると思っています。個人の強みを見せやすい時代だからこそ、ブランディング次第でどんな職種でも自分の旅のスタイルに落とし込めるはずです。

Q.フリーランスになる準備を始めてから、生活できる収入が得られるまでにはどのくらいの時間がかかりましたか?

のち:「生活できる収入」が人によって異なってしまうので、今回は15万円を目安に回答しますね。わたしは、だいたい1年くらいかかりました。もともと、世界一周に行ったときにはフリーランスになる準備を始めないままだったんです。「旅ライター」ですらもない状態だったのですが、旅先から発信をしているうちに、だんだん知られるようになってお仕事につながりました。

:独立前にはある程度の準備をしていたので、前職の先輩からいただける仕事はありました。でも、「旅」をメインにした仕事はほとんどなかったので、だいたい2年間くらいですね。

おわりに

ここまでご覧いただき、ありがとうございました。

会場からの質問を回答したのちに締めくくられた本イベント。最後に、旅のある暮らしにもっとも必要なことをゲスト2名から伺いました。

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のち覚悟体力自分の武器を知ること。この3つです。旅のある暮らしって、「日本には半年いません」なんてことも普通にあるので、自分で生きていく覚悟が必要です。

また、体力は無いよりあったほうがいい。さらに、旅をしながらでも仕事をもらえるようになるためには、遠距離でも仕事を頼みたいほどの秀でたなにかしらが必要なんです。「あなただから仕事を頼みたい」と思ってもらえるように、自分の武器を知って伸ばすことがなによりも大切です。

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:自分の武器は、とても大事ですね。旅って、いつもと違う土地で活動するので疲れるじゃないですか。本当は旅が好きだったはずなのに、だんだんと嫌いになってしまうこともあるかもしれません。

だから、旅のある暮らしを目指すときには、好きなものを見つけるより飽きずに続けられるものを探してみるといいかもしれません。僕は自転車旅を中学校2年生のときから続けていますが、今だに飽きません(笑)しかも、それが今は仕事になっています。

旅のスタイルも、いろいろ試した上で飽きないスタイルを見つければ、ひとときの楽しみではなくライフスタイルの一部になるのではないでしょうか。

Text:Shino Suzuki
Photo:Takumi Yano