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お金の本質を見失ってはいないか? #クラウドファンディングラボ

私たちの世代にとって広く知られた資金調達の方法に、クラウドファンディングがある。

「こんなモノがつくりたい」「こんなことを成し遂げたい」などといった起案者の想いに対して、出資者を募り、資金を集める方法だ。

しかし、いざ挑戦してみようと思っても、なかなか一歩を踏み出せない、サクセスするのかわからない、など、人それぞれさまざまな迷いがあるはずだ。

そんな悩みや迷いに対しての解決策を得る方法は、きっと経験者の意見を聞いてみることが一番。そんな場が、東京・恵比寿で提供された。恵比寿ガーデンプレイスタワー内のインキュベーションオフィス「COEBI」で開催された、クラウドファンディングラボだ。

クラウドファンディグをしてみたいけれど、「サクセスするためのコツはあるの?」「仲間はどう集めるの?」「プラットフォームはどう選ぶ?」など、悩みを抱える方々にとっての解決策を、みんなで考えていく。

(今回のイベントのハッシュタグは「#クラウドファンディングラボ」です。SNSの住人の方々のリアルタイムレポも楽しめるので、ご興味ある方はぜひご覧ください)

※なお、今回のイベントは、大きく分けて2つのセッションに分かれています。前半はクラウドファンディング経験者によるトークセッション、後半はキングコング西野亮廣さんによる講演会です。

クラウドファンディングは、スタート前に結果が出ている

まずはじめに、これまでにクラウドファンディングを経験、成功まで導いた方々を招いてのトークセッションが行われた。

今回の登壇者は、事故で走れなくなったローカル鉄道の復旧プロジェクトとして高校時代にクラウドファンディングを成功させた和泉大介さん、クラウドファンディングで史上最高額となる1億2,800万円の調達に成功した鳴海禎造さん、そして、モデレーターはイベント主催者である小幡和輝さんだ。

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和泉大介(いずみ・だいすけ)
千葉県銚子市出身。獨協大学4年生。2014年、脱線事故で走れなくなってしまったローカル線「銚子鉄道」を復活させるためにクラウドファンディングを実施。484万円の調達に成功した。新聞・テレビなど数多くのメディアに取り上げられ注目を集めた。2017年、銚子市観光大使に就任する。また、現在は学生団体「SUKIMACHI」代表も務める。

和泉大介さん(以下、和泉):みなさんはじめまして、和泉大介です。千葉県銚子市出身で、埼玉県の獨協大学に在籍しています。僕は、4年ほど前に起きた、銚子電鉄の脱線事故をきっかけに、クラウドファンディングで資金を集めて合計500万円ほど銚子鉄道に寄付しました。

銚子電鉄は、銚子市内を走るローカル鉄道だ。大正時代に誕生し、これまで銚子市民に長い間愛されている。しかし、車の発達によって、ローカル鉄道はだんだんと経営が悪化。

なんとか集客を、と考えて銚子市で人気のヤマサ醤油を使用したオリジナル「ぬれ煎餅」を発案。無事、経営が安定した矢先に起きたのが、前述の鉄道事故だった。

車両の修繕費には最低でも500万円を必要としたが、もちろんそんな費用はどこにもなかった。そこで、資金を集める方法として和泉さんが選択したのが「クラウドファンディング」だったという。

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和泉:僕は自分が生まれた銚子市がとても好きです。だから、地元のためになにかをしたいと思った。けれど、修繕に必要なお金が500万円と聞いたときに、駅前でよく見る募金活動なんかでは到底集められない金額だと感じて。なにか良い方法はないだろうかと考えて行き着いた答えがクラウドファンディングでした。

地域創生に関する授業の一環として行われたというクラウドファンディング。クラスメイトと協力しながら、夜遅くまでリターンや集客方法を考えた。

和泉:いろいろなアイデアを出しながら、みんなで「どうしたら支援してもらえるか」と考えました。高校生では、なかなかリターンまで用意できなかったので、銚子電鉄の方々に協力してもらいながら、かたちにしていきました。

人気だったぬれ煎餅の新商品や鉄道の1日乗車券、電車の先頭にあるヘッドプレートをデザインできる権利、つり革広告への記名権、などを準備しましたね。

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鳴海禎造(なるみ・ていぞう)
1980年、和歌山市出身。関西外国語大学卒業。学生の傍ら15歳のときから商売を始める。2007年に自動車輸出入業「FINE TRADING JAPAN」を個人創業し、翌年に法人化。2012年に、将来的に乗り物メーカーとなることを見据えて自社ブランド 「glafit」を立ち上げ。2017年9月、株式会社glafit創業。(プロフィールは一部Makuakeから引用)

鳴海禎造さん(以下、鳴海):鳴海です。15歳のときから、アパレルの個人販売を行なっていました。学校をサボって、和歌山から原宿まで行って買った服を、“雑誌版メルカリ”みたいなところに出品して売って。

大学時代にはPCが欲しかったのですが高くて買えなかったので、学校の行き帰りにジャンクパーツを買って、それらを組み立てて作ったPCを販売して、稼いだお金でPCを買う、なんてことをしていました。

その後、起業をして自動車のパーツ販売や修理などの事業を行なっていたのですが、あるときこの先のビジョンを考える「100年ビジョン」構想をしてみたんです。そこで、ホンダやトヨタみたいな自動車メーカーを作りたいと思って。

そのための第一歩として、まずは 「電気で動くバイクをつくろう」と。そこで、クラウドファンディングで支援を募りました。

これまで150近いメディアに取り上げられた、電動ハイブリッドバイク「glafit」。「クラウドファンディング資金調達額」国内歴代1位、「電動バイクの国内販売台数」1位、さらには「日経優秀製品・サービス賞2017 最優秀賞(日経MJ賞)」など、さまざまな賞を獲得している。

鳴海:クラウドファンディングの結果、1億2,800万円の調達に成功しました。目標としていた300万円も、3時間足らずで達成してます。

3日間で支援額が5,000万円ほどになって用意していたリターンの在庫が無くなってしまったので追加リターンを用意したのですが、1ヶ月以上の期間を残して追加リターンも完売して。「再度追加してほしい」と声も上がっていましたが、クラウドファンディングの場で売ることが僕らの目的ではなかったので、一旦終了しました。

クラウドファンディングの成功は、初日の盛り上がりが命運を左右する

小幡和輝さん(以下、小幡:ここからは、テーマに沿ってトークセッションを進めていきます。まずはじめに、プロジェクトの開始までの期間では、具体的にどんな準備をしていましたか?

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小幡和輝(おばた・かずき)
1994年、和歌山県生まれ。高校3年で起業し、さまざまなプロジェクトを立ち上げる。2017年、47都道府県すべてから参加者を集めて、世界遺産の高野山で開催した「地方創生会議」がTwitterのトレンド1位を獲得。(イベントプロフィールより

和泉:僕はクラウドファンディングを開始する2ヶ月前にあたる、6月から準備を開始しました。準備の内容は、主にプロジェクトページとリターンですね。銚子電鉄とはもちろんのこと、市役所に行ったり、記者クラブに足を運んでプレスリリースの準備もしました。

鳴海:僕の場合は、プロダクト自体の制作とは別に、1年間の準備期間を設けました。クラウドファンディングって、最初は想いに共感してくれる人が必要なので、仲間集めから始めようと。

最初は社内のメンバーのなかから「時間外の課外プロジェクトだけどやってくれる人!」と声をかけて2名を集めました。その後は、プロジェクトを進めるためのタスクを洗い出して、未進行のタスクを進められそうなプロを集めましたね。東京にも出てきて、想いに共感してくれる仲間集めをしてました。

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小幡:「glafit」は、プロジェクトを見たときにクリエティブにこだわっている印象を持ちました。クリエイティブ自体にもお金はかけているんですか?

鳴海:そうですね……本来、あれほどの製品を正規のルートで制作しようと思うと何百万単位のお金が必要なんです。でも、それが用意できないからクラウドファンディングしているって話でもあって。クリエイティブには絶対に手を抜きたくないけれど、かといって、無理言って安く請けてもらうのは失礼。

そこで、「本気でやりたいと思っていますが、お金がありません。だから、プロジェクトがうまくいったら報酬をお支払いします。うまくいかなかったらお支払いはできません。それでも一緒にやってくれますか?」と聞いて仲間を集めました。

小幡:クラウドファンディングの統計として出ているデータには、「初日に支援額の10%が達成するなら、そのプロジェクトの8〜9割は成功する」というものがあります。自分が支援する立場なら、人が集まっているところに支援したいですから。だからこそ、事前の仕込みはすごく重要ですよね。

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小幡:次のテーマに移ります。クラウドファンディングを実施するプラットフォームには、大きく分けて「Readyfor」「CAMPFIRE」「Makuake」が挙げられますが、おふたりはどのような観点で選びましたか?

鳴海:「Readyfor」はイベントに、「CAMPFIRE」は社会貢献活動に、「Makuake」はモノを売りたい場合に、といった具合で、住み分けがすでにあったんです。だから今回は「Makuake」を利用しました。

和泉:僕もそれぞれのプラットフォームごとの特色を見て考えましたね。「Readyfor」なら社会貢献性が強そうだと感じて選びました。また、キュレーターのサポートが手厚かったのもポイントでした。

小幡:プラットフォームによって特徴は変わりますよね。ちなみに僕は「CAMPFIRE」でクラウドファンディングを行うことが多いです。単純に、家入さんの思想が好きだから、という部分ではあるんですが。プラットフォームごとの違いよりも、担当者との相性で利用しやすいかどうかも変わります。

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鳴海:これまで3種類のプラットフォームはすべて利用したことがあるんですが、「Makuake」を利用した今回はプロジェクト開始前に記者会見を開くことになって。僕らの発案ではなく「Makuake」側から発案してくれた上、会場の準備や集客まで全部担当してくれたんです。

事前に、テキストだけでは想いが伝わらないだろうと思って、担当者に制作途中の「glafit」を見せながらプレゼンしたんです。そしたら「話を聞いたり実物を見て初めて、本気度が伝わった」と言ってくれて。担当者やプロジェクトに関わる身近な方をどれだけ本気にさせられるのかがいかに重要なのかを実感しました。

和泉:クラウドファンディングとは言っても、まずは身の回りの人から応援してもらえるようにすることが大切ですよね。僕も身の回りにはクラウドファンディングを知らない人が多かったので、地方創生の事例をたくさん調べてプレゼンしました。

小幡:次に、クラウドファンディングをする上で意識したことや頑張ったこと、失敗談などはありますか?

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和泉:これは失敗談なのかどうかわからないですが、高校生ながらにしてで初めて「叩かれる」経験をしました。多くの方が美談としてに受け取ってくれるのですが、なかには直接DM(ダイレクトメッセージ)で「なんでこんなことをする必要が」「銚子電鉄がやるべきだろう」など、いろいろ言われたりってことはありましたね。

小幡:なるほど。支援がなかなか集まらない停滞期はありましたか?

和泉:ありましたね。でも、停滞している期間を長くしたくなかったので、SNSやプロジェクトページの新着情報とかをこまめに配信していました。

鳴海:基本的に、クラウドファンディングってスタートまでがすべてなんですよね。スタートしてしまったらやるべきことはもうほとんど終わってるので、SNSで発信する以外はほとんどなにもしません。

小幡:最後に、これからクラウドファンディングをする方に向けて、メッセージをお願いします。

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和泉:熱量に限ります。クラウドファンディングは「つくりたい」「やりたい」だからやるもの。熱量さえあればなんとかなるので、一緒に頑張りましょう。

鳴海:一番大切なのは、クラウドファンディングはスタート前からスタートしてるのだということ。プロジェクトをスタートする前の自分がどんなことを考えて発信してきたか、の積み重ねが成功につながります。強い想いを持って、日々発信を続けてほしいですね。

小幡:ありがとうございます。自分が成し遂げたいことを成功させるための手段は本当にクラウドファンディングでいいのか。そして、やると決めたのなら、本気でコミットすることがとても大切ですね。

クラウドファンディングに集金機能はない。あるのは両替機能だけ

後半では、キングコング西野亮廣さんによる講演会が開催された。

クラウドファンディングで資金を募って制作した絵本『えんとつ町のプペル』の存在は、もはやクラウドファンディングを検討している人々にとっては有名すぎる話題だろう。支援者数は約1万人、支援額は5,600万円にものぼる。

そこで今回は、小手先のテクニックではなくクラウドファンディングを活用する方法を語っていただいた。

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西野亮廣(にしの・あきひろ)
1980年兵庫県生まれ。芸人。著書に、絵本『Dr.インクの星空キネマ』『ジップ&キャンディロボットたちのクリスマス』『オルゴールワールド』『えんとつ町のプペル』、小説『グッド・コマーシャル』、ビジネス書『魔法のコンパス』『革命のファンファーレ現代のお金と広告』があり、全作ベストセラーとなっている。自身のプロジェクトにおいてクラウドファンディングを活用し1億円以上を調達。(オンラインサロン公式ページより)

西野亮廣さん(以下、西野):僕からは、クラウドファンディングで上手にお金を集める方法の話をしましょうか。

『えんとつ町のプペル』の資金を集めたときのクラウドファンディングを終えた後、テレビでコメンテーターさんに「本当に制作に5,600万円もかかる?」と聞かれたんですよね。「5,600万円もかからないなら、つまるところ詐欺なんじゃないの」って。でも、まず資金が集まったからといって全額を使えるわけではないんです。

僕は絵本を制作したときのリターンに、サイン入りの本を用意しました。そうなると、まず最低でも絵本代(2,000円弱)と、郵送用のレターパック(360円)が必要です。つまり、3,000円支援してもらっても、制作費用に使えるのは2〜300円くらい。リターンにかかるお金によっては、手元に残らないかもしれません。事実、『えんとつ町のプペル』を制作したときには5,600万円を調達して、5,800万円使いましたから。

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西野:じゃあ、「なんでわざわざクラウドファンディングなんてするんだ?」って話だと思うんですけど、僕が欲しかったのはお金ではなく支援者なんですよね。
クラウドファンディングでは、作り手がそのまま消費者になるんです。絵本って、業界的には5,000〜1万部売れたら良いほうだと言われているような小さな業界です。でもクラウドファンディングをすれば、その人数分の消費者はいてくれるわけです。

これまでは出版社と吉本興業とでしか作れなかったものが、クラウドファンディングならみんなで作って届けられる。クラウドファンディングをする本質は、絵本を作るための資金を集めるためなのではなくて、共犯者を増やすところにあるんです。

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西野:イベントやサイトや箱(場所)を作るときもまったく同じなんですけど、お客さんが来なかったら潰れてしまいますよね。だから、集客まで考えることがすごく大切です。集金のタイミングは、集客のチャンスでもあるので。

たとえば、『えんとつ町のプペル』が売れたときに吉本から「次の絵本の制作費はウチが全部出す」って言われたんです。でも、このお金は絶対に受け取っちゃダメで。吉本から出してもらったお金で絵本を作ると、作り手がいないんです。作品はたしかにできるけど、売るのが大変。そして、売れなかったら、なにもしてないことと同義なんですよね。

地方創生の失敗例としてよく聞くのも、地方助成金をたやすく受け取るケースです。交流館みたいな箱だけ作るけど、行政くらいしか作り手がいないので維持費が出ていくだけでみんな興味がなくて。結局潰れてしまうことになりかねません。

現代のお金は信用の“数値化”である

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西野:クラウドファンディングで勝とうと思ったのなら、「お金とは?」「クラウドファンディングとは?」の答えをしっかりと持っておくべきだと思っています。
まず、お金とは「信用の数値化」です。クラウドファンディングとは「信用をお金に両替するための両替機」です。間違えてはいけないのは、集金装置ではないのだってこと。集金機能ではなく、両替機能しかついていないんです。

それでは、「お金とは信用である」の話を詳しくしましょうか。ちょうど今日は、会場にホームレス小谷が来ているので彼で解説します。

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ホームレス小谷さん。自身の1日を50円で売り続けている。5年間で25kg太ったそう

西野:彼は、5年くらいホームレスをしている「小谷さん」です。毎日寿司食って、好きなときに好きなところに行って、海外を飛び回っています。みなさんが思っているホームレスとどこか違いませんか?

小谷は、手元にお金は持ってないけれどお金には困ってないんです。なぜなら、現代のお金を把握しているから。
彼は自分の1日を50円で売って生活しています。普通、50円でしか自分の1日を売れないなんて嫌じゃないですか。でも、彼は50円でなんでもする。

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▲小谷さんが実践したのは、まさに信用の数値化だった

西野:1日働いてもらって、たとえばそれ以上の金額を渡そうと思っても、彼はお金を受け取らない。だから「何かしらを与えきゃ」とバイアスがかかる。そうすると、ご飯をご馳走したり、飲みに連れていったりするんですよね。しかも、その上彼は「ありがとう」と感謝されっぱなしになる。

つまり彼は、お金は稼がないけれど信用を稼いでるんです。僕たちの先輩は労働の対価として現金を受け取ってきたけれど、小谷は労働の対価には信用を得ているんです。その結果、おもしろいことが起こりました。

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西野:小谷は、50円で仕事を依頼してくれたある女性と、出会った翌日に結婚したんです。そのとき、「披露宴を彼女にプレゼントしてあげたい」と考えて僕に相談してきました。披露宴はだいたい200〜300万円くらい必要ですが、彼は毎日休まずに働いても1500円/月しか稼げないんですよね。そこで、クラウドファンディングでお金を集めて浅草「花やしき」を貸し切っての披露宴を行うことにしました。

すると、これまで50円で彼の1日を購入してくれた人がみんな支援してくれたんです。小谷はお金持ちではないけど信用持ちだった。だから、信用をお金に変えるクラウドファンディングでお金を手にできました。彼はこれまでに20〜30回クラウドファンディングをしているけれど、全部成功しています。それもすべて、お金が手元になくても信用でお金を作ることができるから、なんですね。だからこそ今の時代は、とにかく信用を稼ぎにいくことが一番大切です。

信用を稼ぐなら、嘘をつかなければいけない環境に身を投じない

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西野:じゃあ次は、信用ってどうやって稼いだらいいのかって話になりますよね。ひとつは、小谷さんみたいに「ありがとう」を稼ぐ方法があります。

ひとつ、ここで知っておきたいことがあります。僕の著書『革命のファンファーレ』のなかでも書いていることですが、テレビタレントってクラウドファンディングとの相性が悪いんです。

有名だからすぐにお金が集まりそうなんですが意外とそんなことはないんですよね。
どうして、テレビタレントはクラウドファンディングに失敗するのか。給料の出所を考えてみればわかりやすい話です。テレビタレントの給料って、番組スポンサーからの広告費から“ギャラ”として支払われています。

だから、タレント側が求められているのは、スポンサーが喜ぶような好感度。つまり、たとえばグルメ番組でまずいものを食べても「おいしい」って言わなければいけないんです。それが仕事だから。

でも今は、嘘をついたらバレる時代になりました。昔ならタレントが言っていることが本当かどうかわからないままでしたが、今はSNSも情報サイトもあるから本当のことがバレる。嘘をついてきたタレントは、人からの認知は得られるけど、信用は下がっていくんです。今は、なんでもわかるから信用が下がって行く。「認知タレント」と「人気タレント」はまったく別物なんですね。

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西野:図に書いて考えてみましょう。横軸を信用、縦軸を認知度だとします。いわゆる「認知タレント」は、図の左上のあたりに位置します。「人気タレント」は右上あたりですね。そして、クラウドファンディングをするときに自分がいないといけない立ち位置は、少なくとも座標の中心からは右側。信用のない状態では、クラウドファンディングをしても人が集まらないんです。

それなら、その「信用」はどうやって稼ぎましょうか。
一番手っ取り早いのは、嘘をつかないことです。だいたいの人間は嘘をつきます。100人いれば、きっと100人が嘘をつくでしょう。でも先ほどの認知タレントの話を考えてみてください。彼ら彼女らは、日頃から嘘をついているのではなく、広告塔でなければいけない瞬間に嘘をつく。

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西野:つまり、嘘は感情でつくものではなく、つかざるを得ない環境に追いやられたときつくものなんです。それなら、自分が嘘をついてしまうかもしれない環境に身を投じたらダメなんですよ。僕はそう考えたから、「テレビに出る仕事を受けないようにしよう」と決めました。
どんなに目先のお金に目が眩んでも、そこでお金を得る代わりの信用を失うなら、その環境には飛び込んじゃいけないんです。

リターンは、まとめず小分けにしておくこと

西野:最後に『革命のファンファーレ』にも書いた、クラウドファンディングの小ワザを紹介しましょうか。
クラウドファンディングをする上では、自分たちのプロジェクトページがひとりでも多くの人に見つかったほうがいいじゃないですか。人は行列に集まるようにできているので、やっぱり人数や金額を見て盛り上がっているところに支援したくなります。そこで、リターンでポイントをしかけておくんです。

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クラウドファンディングでよく見るリターンの形式は

  • リターン1:Aの商品
  • リターン2:AとBの商品
  • リターン3:AとBとCの商品

みたいに、支援額によってリターンが増えていく構造です。
でも、この方式だとAもBもCも買ってくれたのに支援者は「1人」としかカウントされないんです。

でも、

  • リターン1:Aの商品
  • リターン2:Bの商品
  • リターン3:Cの商品

のように、リターンを全部分けておくとAもBもCも購入してくれたら支援者は「3人」とカウントされる。購入者自体は1人だけど、人がたくさん集まっているように見せることができる。

『えんとつ町のプペル』も、支援者数は1万人とされていますが、同一人物を含めたら5,000人くらいですから。ひとつの小技として覚えておいてください。ちなみに、詳しいことは『革命のファンファーレ』に書いてあります(笑)

アイデアの源泉は人に頼ったっていい

イベントの最後には、参加者による質疑応答が行われた。
クラウドファンディングに挑戦しようと考えている方々からは、具体的なアイデアや悩みの解決策などを求める声があがる。

今回は、クラウドファンディングのアイデアに関する質問は一部割愛し、ピックアップしてお届けする。

Q.発信力があると人もお金も集まるとの話が(前の質問で)出ましたが、SNSを運用して人よりも突き抜けるための戦略を教えてください

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西野:必ずしもフォロワーが増えればいいわけではないけれど、自分ではない誰かにブレーンの役割は任せるのがいいと思います。自分の脳みそのサイズなんて増やせないのだから、それなら他人の脳みそを奪おうって話で。

人は、「イエスマン」で、とにかく行動する人にアイデアを出したくなるんです。みんな、いろいろなアイデアを思ってはいるけど行動はしないから。だから、自分が一番動き続けるブランディングをしてさえいれば、人とアイデアが寄ってきます。大切なのは、みんなの実験台、いわばモルモットになることだと思いますよ。

Q.現在、1万人のフォロワーがいるのにイベントを開催してもなかなか集客できません。イベントに参加してくれるような濃いファンを獲得するにはどうしたいいですか?

西野:イベントの集客を増やすなら、やり方はひとつ。お客さん同士を繋げる接着剤になればいいんです。
昔、テレビに出れば出るほどリアルなイベントの集客が落ちてしまっていた時期がありました。自分たちでお客さんを集められなければ、一生スポンサーに使われる身になると思ってやったことが、ライブ後の打ち上げ場所の指定です。

ライブって、せっかく人が集まったのに、終了したらそのまま解散してしまうからもったいないなって思って。打ち上げ場所を指定することによって、そこで出会った仲間が「また〇〇さんに会えるかも」と、お客さん同士集客する状態をつくれるんですよね。今はもう“受け手一方”な構造には限界がきているので、お客さん同士をどうやって繋ぐのか、がポイントです。

おわりに

以上、クラウドファンディングラボをレポートしました。

繰り返しになりますが、イベントのリアルタイムの雰囲気は「#クラウドファンディングラボ」からご覧いただけます。(無事トレンド1位を果たすほどの盛り上がりだったので、ぜひ覗いてみてください)

クラウドファンディングに挑戦してみたい方にとって、なにか少しでも有益な話をご提供できていたらうれしいです。
それでは、最後までご覧いただきありがとうございました。

Text:Shino Suzuki
Photo:Takumi Yano